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2019.06.27コラム知っていますか? 脚の一生

る日私の診察室に、おばあさんとお母さんが歩き初めの孫を連れて来られました。 『うちの嫁がこの孫をおんぶばかりするもんだから、この子の脚がこんなにO脚になってしもうた。治りますか?』
この手の質問は、クリニックの小児外来ではよく聞かれます。こういった時の私の説明は、だいたい次のようになります。 『子どもは歩き始めの時期はみんなO脚ですよ。それが3歳頃から次第にX脚になります。そして6~7歳でだんだんまっすぐになっていくんですよ。 (図.1) 
 


これが自然の脚の成長なんですよ。決してお嫁さんのおんぶのせいでお孫さんがO脚になったわけではありません。それよりもし、今この時期でまっすぐだったり、X脚だったりしたほうが大変です。ですからどうぞご安心下さい。』
そうすると、陰をひそめていたお母さんの顔がほころび、安心した顔になってきます。私の説明はまだまだ続きます。
『それにおんぶや、コアラだっこ (図.2) は子供さんの股関節の発育にとって、非常にいいことなんですよ。先天性股関節脱臼ってお聞きになった事があるでしょう? その時はおむつを何重にもあてて厚くして、子供の股関節をおんぶやだっこをした時と同じ様な状態にしておくんですよ。』

 

ここまでお話しすると、お母さんもおばあさんも納得して、よちよち歩きの孫の手をひいて診察室をあとにします。
その時おばあさんには話しませんでしたが、脚の一生と言うものは面白いもので、そうやって6~7歳でまっすぐになった脚は、成人後年をとると共に、またO脚になっていきます。人間が二本脚で歩いている以上、体重は膝の内側にかかり、内側の軟骨が摩耗していくために (図.3矢印A) O脚になっていくのです。
その結果、O脚の人の足の裏の外側に体重がかかります。O脚の人の靴の外側がよくすり減るようになるのはそのためです。 (図.3矢印B)

 

それでは、その予防策を考えてみましょう。
『足底板』という言葉をお聞きになった事がありますか? これは正式には『外側楔状板』といい、簡単にいえば外側が厚く内側が薄い靴の中敷き (図.4矢印C) のことです。 これを使用する事で、膝が内側に移動してO脚が改善され、内側の関節が開くことで、軟骨の摩耗を防ぐ事ができるのです。(図.4矢印D)
ある程度の年代になったら、膝が痛くなる前に靴の裏をまめにチェックして膝を長生きさせたいものですね。