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2019.06.26コラム知っていますか? 椎間板ヘルニア

今回はヘルニアについてお話しましょう。
そけいヘルニアや腹壁ヘルニア(脱腸)という病気をご存知の方は多くおられると思いますが、ヘルニアという言葉は英語のherniationをローマ字読みしたもので、日本語の「突出」つまり、ものの中身が飛び出したことを意味しています。
『椎間板』は、背ぼねの骨(椎体)と骨(椎体)の間に挟まれたクッションの役目をする「軟骨」で、その中央にあるゼリー状の髄核をゴム状の線維輪が囲んでいます。周囲の線維輪が徐々にいたんできて、とうとう裂けて髄核が飛び出した状態が『椎間板ヘルニア』です。ちょうどお餅を火であぶった時に裂けて中身(あんこ)が出てきた状態を想像されるとイメージがわくでしょう。また、ゴム状をした線維輪が裂けてしまうのは、ちょうど自動車のタイヤが古くなってくると、表面にだんだん亀裂が入っていってついにパンクするのにも似ています。椎間板の場合、裂け易い部分がちょうど悪いことに脊髄(神経根)のある方向にあり、ここでヘルニアとなった部分が神経を圧迫して痛みが生じてしまうのです。
ではヘルニアになった場合どうしたら良いのでしょう。まずは安静です。本来、身体を支える役目をしているのが背ぼねです。その「背ぼね」の中にあるクッションの役目を果たしている椎間板が傷ついているのですから、身体を休め安静にして時を待ちます。なぜなら、ヘルニアは飛び出しているだけでなく、急に裂けたためにそこに『炎症』が起こり、腫れて「たんこぶ」のようになって痛みを発生する化学物質(疼痛物質)が放出されています。「たんこぶ」をマッサージする人がいないように、安静にすることで炎症をおさえ痛みも軽減してきます。安静と同時に炎症をおさえる薬(抗炎症薬)を飲むのもよいでしょう。内服薬は飲んで全身に行き渡り効果を出すのですが、ヘルニアのある炎症の生じた局所そのものに抗炎症作用のある注射をするとより効果があります。これが硬膜外注射や神経根ブロック注射です。これらの治療は、ヘルニアで裂けた部分の周囲の炎症をとる治療ですが、とび出しが大きくて神経根を機械的に強く圧迫したヘルニアには、神経を圧迫し刺激しているヘルニアそのものを物理的に取り除かねばなりません。これが手術です。
手術には、椎間板の中身の圧力を針のようなもので抜いて結果的にヘルニアを小さくして神経の圧迫を少なくする方法と、直接切開して神経根を圧迫しているヘルニアそのものを取り除く手術があります。これらの手術により脊髄(神経根)の圧迫が取り除かれ痛みがなくなるのです。
手術前の患者さんから「手術をしたら治りますか?」という質問をよく受けます。痛みはとれますが残念ながら「治る」わけではありません。手術によって、壊れた椎間板を新しいものに置き換えることができるわけでも、傷ついてしまった神経根を新しいものに取り替えることが出来るわけでもありません。つまり手術は壊れた部分を修理するだけなのです。修理したからといって無理をして使っているとまた壊れてしまいます。再度壊れてしまわないためには、背ぼねの負担をできるだけ少なくするために体重を軽くしたり、「背ぼね」を支える腹筋や背筋を鍛えていくことが術後のリハビリとして大事なことです。

手術の必要のない位の軽いヘルニアに対しても、減量や腹筋・背筋の筋力アップが椎間板内の圧力を下げることにより痛みをやわらげることができる、ということもつけ加えておきましょう。